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「低ホスファターゼ症」という病気を知っていますか?

こんにちは、三重県松阪市にあります(医)尚志会 林歯科医院の副院長・林玲子です。

「低ホスファターゼ症」という病気を知っていますか?

 

この病気は10万〜15万人に1人の割合で発症するという希少疾患ですが、ここ数年、小児歯科の分野で取り上げられることが多くなりました。

 

「低ホスファターゼ症」は骨の強さや成長にかかわる酵素「アルカリホスファターゼ(ALP)」の働きが弱いために起こる難病で、主に骨がうまく育たないことによる骨格の異常や呼吸器障害、筋肉・関節症状、腎障害や神経系障害などがおこり、症状としては骨化不全、呼吸不全、体重増加不良、高カルシウム血症、けいれん、乳歯早期脱落などが上げられます。

 

分類としては、
発症時期および症状の広がりに基づいて、胎内で発病する「周産期型」、生後半年以内に発病する「乳児型」、小児期に発病し乳歯の早期脱落を伴う「小児型」、成人期に発病する「成人型」、症状が歯に限局する「歯限局型」の5つの病型に分類されます、一般に発症時期の早いものほど重篤で、場合によっては命に係わる病気です。

 

その反面、2015年に低フォスファターゼ症の治療薬が日本で発売され、酵素補充療法が可能となっているため、幼少期からこの薬剤を使用することにより、病気が改善し、生活の質が飛躍的に向上するようにもなってきています。
何より早期に病気を発見し、適切な治療を受けることが重要とされています。

一般的に乳歯は5・6歳頃から抜け始めますが、低ホスファターゼ症の子はそれより早く歯がぐらついたり抜けたりする場合が多く、歯と歯の骨との接着部分に障害が起こることで、歯の根が吸収していないにも関わらず、歯の歯根が長いまま脱落してしまうのが特徴と言われています。

 

歯科ではもちろんこの病気の治療はできませんが、早期に発見し適切に専門医と連携してゆくことでお役に立つことができるかもしれません。

 

5つの分類のうち歯限局型は、比較的軽症ですが、その時点で歯限定なだけで、その後小児型や成人型に移行する場合もあります。軽症がゆえに発見が遅れ、治療の開始が遅れてしまわないように

 

 ①4歳以下で乳歯が抜けた!グラグラする

 

 ②抜けた歯の根が長い

 

といった場合は小児歯科にご相談ください。

 

最近の保護者の方の多くはお子さんのお口の健康に対する意識が高く、昔のように「乳歯が虫歯になっても永久歯が生えてくるから大丈夫」なんて考える方は少なくなっているものの、

「乳歯が抜けても永久歯が生えてくるから大丈夫」なんて思わずなるべく早めにご相談くださいね。

 

 

 

 

 

参考文献

大薗恵一 低フォスファターゼ症(医学的)総論 小児歯科臨床 232(2):6,2018

新谷誠康 低フォスファターゼ症(歯科的)総論 小児歯科臨床 232(2):12,2018

飯沼光生 低フォスファターゼ症ケーススタディ(4症例) 小児歯科臨床 232(2):38,2018

園本美惠 歯の外傷による乳歯脱落を機に歯限局型低フォスファターゼ症発見に至った一症例小児歯科臨床 232(2):42,2018

 

Key word  低ホスファターゼ症 乳歯の早期脱落・4歳前に乳歯が抜けたら