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神経の治療とは細菌と複雑な歯根内部の形状との戦い

こんにちは、松阪市の歯医者 林歯科医院の勤務医 澤崎です。

歯の神経の治療について

今回は歯の神経の治療についてお話いたします。神経の治療には歯髄疾患と根尖性歯周組織疾患の2つにわけることが出来ます。大まかに歯髄疾患は歯の内部でむし歯の細菌感染などが原因で歯の神経(歯髄)に炎症が起きてしまったことを言います。根尖性歯周組織疾患とは歯の神経が死んで細菌が歯の内部にとどまらずに歯根の先端から歯の周りの骨などに感染が広がってしまったことを言います。『大きなむし歯なので神経の治療が必要です。』とかレントゲンで『歯根の先に黒く映る病変があります。』といわれたら歯髄の治療(歯内治療)が必要になります。

歯髄疾患と根尖性歯周組織疾患の原因

歯髄疾患の原因としては、むし歯だったり外傷で歯が欠けたりして神経まで症状が出てしまうときに治療法として抜髄を行います。まだ歯髄は生きていますので麻酔が必要になってきます。それに対して、根尖性歯周疾患の場合は感染根管治療といい、細菌感染などで歯髄がダメージを受けて痛みを感じないので麻酔はあまり必要としません。

歯髄疾患と根尖性歯周組織疾患の治療法

どちらの治療法も歯の頭から歯髄まで穴をあけてアプローチして、ファイルと呼ばれる針のような細いヤスリをいれて感染した歯髄や象牙質を除去してお薬を貼薬することで歯根内の細菌数を減らしていきます。しかしながら、実際の歯根の内部は模式図のようにシンプルな円筒な形状はしておらず、扁平状(イスムス)になっていたり歯の内部で歯髄が枝分かれしたり、合流したりして器具が到達しづらい形状になっているので歯根内部はきれいにしづらい形態になっています。さらに根尖でも細かく枝分かれしていることがあるので内部を完全にきれいにするのは難しいことがあります。また、複雑な形状をしているせいで細いファイルが途中で引っ掛かり折れて残ってしまうこともあります。

研究報告によると、神経の治療の成功率は、初めて歯髄の治療を行った場合は約90%、根尖病変がある場合で約80%。再度根管治療を行った際に根尖病変がある場合には約70%、何らかの原因で根尖形態が破壊されていて病変がある場合には約40%まで治療の成功率は下がってしまうので治療回数にどうしても限界があります。

根尖性歯周歯周炎について

そして、根尖に炎症がある状態を根尖性歯周炎と言いますが、腫れや強い痛みがある急性症状がでた場合には要注意です。次の日には顔の輪郭が変わるぐらい大きく腫れ、お口が開かなくなることもあります。このような状態になるとすぐに大きな病院に入院して治療を受けてもらうことになります。さもないと、首元まで腫れて呼吸困難になったり、重力に従って細菌感染が胸部まで行くと重篤な状態になったりしてしまいます。

最後に

怖い話になってしまいましたが、神経の治療が必要になる原因はむし歯の場合がおおいので、大きなむし歯になる前に歯医者さんに定期的に通院して早期発見・早期治療をお願いいたします。

参照元:歯内治療学 第4版 医歯薬出版株式会社

歯科医師 澤崎 孝平