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【歯科医師が教える】ナイトガード使用の意義

 歯ぎしり、咬耗、歯の欠け、歯の破折、歯の動揺など見受けられる患者さまに対しては就寝時のナイトガード着用をしていただくよう推奨しております。

ナイトガードとは

 ナイトガードとは、睡眠中の不随運動(主に睡眠時ブラキシズム)による咬合力から歯、補綴装置 (銀歯、白い被せ物など)、歯周組織、顎関節などを保護するために、夜間に装着する口腔内装置のことです。

 睡眠中には嚥下や寝言など、様々な顎顔面口腔活動が認められます。その中でも睡眠時ブラキシズムは、その過剰な咬合力により歯や補綴装置などに破壊的影響をもたらす可能性があります。睡眠時ブラキシズムは、睡眠中の生理学的咀嚼筋活動である律動性咀嚼筋活動(Rhythmic Masticatory Muscle Activity ; RMMA)が基準値を超えた場合の診断名です。一般集団の約8%が睡眠時ブラキシズムに罹患しており、健常成人でさえ約60%がRMMAを行っていると報告されています。その力学的特性は特異的なものであり、覚醒時の最大咬合力は体重と同程度であると報告されていますが、RMMAでは覚醒時の最大咬合力を超える力を発揮する者もいます。このような過剰な負荷が、様々な咬合位で発揮されます。

 睡眠時ブラキシズムが引き起こす可能性のある症状として、歯(咬耗、アブフラクション”歯頚部の実質欠損”、歯の破折、知覚過敏など)、補綴装置(脱離・破壊、インプラント体の破損)、歯周組織(咬合違和感、外傷性咬合など)、咀嚼筋(咀嚼筋違和感、疲労など)、顎関節(顎関節違和感、疲労、痛み、開口障害など)、口腔内骨組織(下顎隆起、外骨症など)、口腔粘膜(舌・頬粘膜の圧痕)、頭頸部(緊張性頭痛、肩こり)、その他、があります。

ナイトガードの効果について

 ナイトガードの効果の報告としては医中誌にて、ナイトガードの使用中断と共に残存歯の咬耗が著名に進行した症例や、ナイトガードを製作したものの、患者本人が毎晩使用しなかったため、補綴装置のボーセレン前装のチッピングやメタル部分の露出、ブリッジ脱離が生じた症例もありました。また補綴治療後ナイトガードを使用しなかったところ、1年以内にブリッジ脱離や残存歯の咬耗、破折による歯質欠損が生じ、ナイトガードを使用したところ、約5年間良好な経過であったと報告されています。

 2018年に全国2,345の歯科医院で行われた全国抜歯原因調査結果でも、歯が失われる原因で最も多かったのが「歯周病」(37%)で、以下「むし歯」(29%)、「破折」(18%)です。歯の破壊や補綴装置の破損・脱離は睡眠時ブラキシズムと関連していると考えられるが、日中の噛みしめ癖や食習慣によっても生じる、また本人での比較ができないので原因の特定は困難ですが、少なくとも歯科医師、歯科衛生士からの睡眠時ブラキシズムの疑いを指摘された場合にはナイトガード使用を検討していただけたらと思います。

                          歯科医師 濵田真智