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患者様に向けた
歯科情報のご提供

抜歯の判断基準

歯周病や虫歯は放っておくとその歯は抜歯しなければならなくなります。しかし毎日診察している中で、「この歯は残せる?」と考え込むことも少なくありません。そういった状況で困った時に、私はある程度の抜歯の判断基準を持っています。如何に5つに分けて示します。

 

①残っている歯の量、崩壊量

虫歯を削っていって、健康な歯が植っている骨よりも下側にしか残らなかった場合は抜歯します。微妙な位置の場合、限局矯正で引っ張り出したり、歯周外科を用いて抜かずに済む場合もあります。

 

②歯の揺れ

歯周病が進行すると骨が溶けて歯が揺れてきます。歯をピンセットで揺らしてみて、歯が上下に動くようであれば抜歯となります。左右前後のみ揺れるようであればかみ合わせを調整したり、ナイトガードをはめてみたりして揺れがおさまってくるか経過を診ます。

 

③骨に植っている歯の根っこの長さの割合

歯の見えているところより骨に植っている根っこが短い歯に被せ物をする場合その負担能力が低く、抜歯の判断基準とされます。

 

④根っこの先の状態

歯の根っこの先に病変があり、治療しても痛みなどの症状が消えず、歯の中にある神経の管が閉じてしまっている場合、抜歯となることが多いです。ただし、根っこの先だけを切り取る手術をしたり、一度その歯を抜いて、根っこの病気を取って再び戻す再植という手術をして保存を試みる場合もあります。

 

⑤戦略的な意味

隣の歯を守るためにあえて抜歯することがあります。これは歯の周りの骨を失っているが、まだ隣の歯との間の骨がわずかに残っている場合、実施します。

 

抜歯かな、と迷った時には以上のことを考えて判断します。

しかし患者様ごとに状況は様々ですし、患者様自身のお気持ちも重要だと考えているので、その判断は流動的です。

また、歯の根っこだけでも残すことで、周りの骨を保存できたり、物を噛んだ時の感覚を残せるなどの利点もあるので、やはりできる限り歯は抜かずに残すことが第一だと思います。さらに、重度歯周病で一見抜歯だと思える歯でも、しっかり歯周病治療をすることでより長期的かつ有効に維持することが可能となるため、まずは歯周病の治療を徹底することで1本でも多くの歯を残したいと考えています。

 

歯科医師 藤村